知的財産の専門家として、柏、我孫子のエリアを拠点に、中小企業、飲食店、スタートアップ・ベンチャーに知財サービスを提供している金森先生。1人でも多くの経営者の方に知財に対しての意識を高めていただけるよう日々活動されています。そんな先生に事務所の特徴や今後の展望などインタビューさせていただいた。
弁理士(特定侵害訴訟代理業務付記)
第1級陸上特殊無線技士
第二種電気工事士
工事担当者(AI・DD総合種)
電気通信主任技術者(伝送交換)
先生が弁理士を志した理由は?
大学時代から弁理士という存在自体は知っていたのですが、頭のどこかで弁理士は理系の資格だから文系の自分には無理だと思っていました。文系ではありましたが、大学卒業後は技術職の仕事に就きました。最初に入った会社が防犯機械警備の会社で、その後も半導体工場や大手通信系の会社で働きました。大手通信系の会社で働いていたときは自分の時間がけっこう作れたので、電気工事士や電話工事関連の資格を取り、最終的には電気通信主任技術者という資格を取得しました。ただ、その後、電気通信主任技術者という資格は大手通信系会社の部長クラスでなければ用をなさないというようなことを聞きました。とは言っても、いつか役に立つときがくるだろうと思いつつ、悶々とした日々を過ごしているときに妻から弁理士の資格試験を受けてみてはと言われました。そこで弁理士について調べてみたところ、理系でなくてもやる気さえあれば誰でも受験することができる資格でした。また、弁理士試験が1~3次試験まであり2次試験が論文試験なのですが、その論文試験には必須科目と選択科目とがあります。私の場合、電気通信主任技術者の資格を持っていたので2次試験のうち選択科目が免除されることがわかりました。これはアドバンテージだなと思い、受けてみようかなと思うようになりました。最初はそういった理由で目指そうかと考えていた弁理士でしたが、その仕事内容も調べてみたところ、技術内容について主観的な感想を書き連ねていくのではなく、極めて客観的に文章化しなければならないところに興味を持ちました。私は文章を書くのも読むのも好きでしたので、これは単なる資格というところ以外で面白みを見出せるのではと思い目指すことにしました。
K-FOREST知財事務所の特徴って?
自宅がある柏市を中心に地元の中小企業や飲食店、スタートアップ・ベンチャー企業、知的財産のことをまだ知らない方々に対して、知財サービスを提供しています。大企業を相手に知財サービスを提供している弁理士は多いですが、中小企業、飲食店、スタートアップ・ベンチャーを相手に仕事をしている弁理士はまだまだ少ないです。企業全体の99.7%が中小企業です。その中で特許出願に関わっている中小企業はとても少なく、飲食店を含めると尚更です。知財を知らないという方たちがとても多いので、そういう人たちに手を差し伸べること、支援していくことが弁理士たる私の責務だと考えています。
大企業には知財部が整備されていて、事務所に出願依頼する際はすでに自社である程度戦略を練ってから依頼されているところがほとんどです。しかし、中小企業はそういった部署もなく知財に対する意識がないまま日々の業務に追われ、自社の経営を進めています。それが後々になって知財に目を向けていなかったがために大打撃を受けてしまったという企業もあります。私は、そのようなリスクが発生することのないように、1人でも多くの経営者の方に知財に対しての意識を高めていただけるよう日々活動しています。
地方の方にももっと知財に興味を持っていただけるよう柏や我孫子をはじめ、妻と出会わせてくれた広島にも恩返しをしたいということで、妻の地元の広島県江田島市も盛り上げようと今動いています。 江田島市は、調べみると商標権をもっている企業はごく一部ですし、特許出願もほぼありません。江田島を拠点とする弁理士もいません。私は、弁理士を潜在的に必要としていると思われる地域に対して、知財の観点から地域支援ができればと思っています。
私が対象にしているのは知財に対しての認識がない、もしくは知財について全く知らない方がほとんどなので、いかにわかりやすく伝えていくかを考えています。そもそも弁理士という言葉自体も知らない方が多いので、どう自分たちの経営や仕事に関わっているのかというところを、専門用語ではなく、経営者に響く言葉に変換して伝えていくことを心がけています。
特許は、概ね製造メーカーやモノづくりをされている企業でなければ対象にならないのですが、飲食店を含むほとんどの事業者に商標や屋号、商品名が関わってくるので、商標の話であれば取っ付きやすいのではと思い商標に関するセミナーをやっています。そのセミナーでは、ただ単に講師がセミナー受講者に一方的な知識を垂れ流すだけではなく、時間が経ってもなるべく忘れることがないように、ワークショップを取り入れています。 いきなり専門用語を出さずに、例えばAという商標があって、他社がA‘みたいなものをやってきたときに似ているのか似ていないのかを実際に体験して考えてもらった方が印象に残りやすいのではと考えました。また、商標に関して事件になっている内容を取り上げて紹介しつつ、事件をこういう観点でみると面白いですよといったように、頭で理解するというよりは肌感覚で理解いただけるように工夫しています。
今後の弁理士業界とその中での先生の展望について教えてください。
AIの出現により弁理士の仕事量も今より減少してしまうではないかと言われていますが、私は知財制度がある以上そうはならないと考えています。中小企業や飲食店の経営者の方は知財について知らないという人がまだまだ多く、それは潜在的には知財のユーザーたり得る企業が相当数存在しているということになるので、考えようによってはむしろ弁理士の仕事量は増えていくのではないかと思います。今後は、まだ目を向けていない市場に対して弁理士が関わることができるフィールドが無限に広がっていくように感じています。
日本の産業を下支えしているのはほとんどが中小企業です。特許庁をはじめとして関係省庁が積極的にスタートアップ支援、中小企業支援にシフトしている中で、弁理士も足並みをそろえていかなければと感じています。私は、その中で求められる弁理士像は、コミュニケーションを柔軟に構築できる人であると考えています。それができればAIに仕事をとられることはないですし、弁理士を潜在的に必要としている経営者に対して、積極的に手を差し伸べていくべきであると考えています。
新たな弁理士の業態としてコンサルティングや中小企業の知財戦略さらには経営戦略にまで踏み込める弁理士の市場はこれから益々拡大していく可能性が高いと考えています。
現在基盤としている柏、我孫子エリアでは、知財に関してまだまだ知らない人がたくさんいますし、弁理士と接点を持てていない経営者もたくさんいます。その中でまずは、柏、我孫子を含む近隣エリアの経営者のほとんどが知財について何も知らないということはない状態にしたいです。
地方を知財で盛り上げていく仕掛人のようなイメージで、まずは柏、我孫子、江田島を話題作りの地としてスタートし、その後はもっとエリアを広げて地方を知財の力で支援していきたいと思います。その地方での活動が話題として広まって、自分のところもそろそろ知財について考えなければいけないなという気づきを与えられる弁理士でありたいです。