明治26年に設立した木戸特許事務所の4代目にあたる木戸良彦先生。歴史ある特許事務所ならではの特徴や今後の弁理士業界についてなどインタビューさせていただいた。
2011年日本弁理士会農水知財対応委員会副委員長
2012年、2016年日本弁理士会執行理事
2017年 日本弁理士会副会長
2018年 日本弁理士会弁理士法改正委員会委員長
2014年~ 特許庁事務系職員研修講師
2015年~ アジア弁理士協会本部理事
先生が弁理士を志した理由は?
曾祖父の時代から特許事務所をやっていて、私で4代目になるので、家業であったことがきっかけの1つです。また、大学を卒業する際に、弁理士になるにせよ社会に出るにせよ、大学院に行った方がいいかなと思い進学しました。そこでいろいろ研究していく中で将来の仕事を考えたときに弁理士という選択肢も悪くないと考えるようになり、大学院を卒業後に弁理士を目指しました。
木戸特許事務所の特徴って?
当事務所は歴史がとても長く、特許出願だけでなく商標出願、意匠出願においても数多くの実績があり、それ以外にも税関に対する輸入差止申立手続や訴訟など、弁理士業務の中でそれほどメジャーではない分野も含めてかなり幅広く経験しているのが特徴です。
歴史のある事務所なので、何十年来のお客さんにも多く来ていただけています。長年蓄積された資料もたくさんありますので、かなり古い資料を引っ張り出すケースもありますね。
海外への出願もかなり多くやっています。国としては、アメリカ、ヨーロッパだけでなくアジア諸国や中東への出願実績も豊富です。私がアジア弁理士協会の理事もやっている関係で、アジアの弁理士とのネットワークを持っているのも特徴です。
相談に来られた方には、あまり専門的な言葉を使いすぎないように意識しています。もちろん法律的に正しいことをお伝えしたいのですが、法律用語を使いすぎるとイメージが湧かない可能性があるので、法律用語の翻訳家という立場できちんと相手が分かるように、腹落ちしていただけるアドバイスを心がけています。
同じ言葉でも人によっては違うイメージを抱いてしまうこともあると思います。例えば、異議申し立てという言葉1つとっても、漠然とした異議申し立てと、特許法上の手続きにおける異議申し立てではだいぶ意味合いが違ってくるので、どのように認識されているかを把握しながら言葉を選ぶことも心がけています。
今後の弁理士業界とその中での先生の展望について教えてください。
国内の特許の出願件数が減少傾向にある中で弁理士は増え続けている状況なので、今までのスタイルのビジネスだけでは難しくなるのは目に見えています。外国への出願意識が高いクライアントさんが増えてきていますので、外国出願のスキルを磨くことと、外国から入ってくる出願件数を増やすことが重要になってきます。日本に出願してくる国はまだ欧米諸国くらいしかないのですが、それが経済成長に合わせてアジアに波及し、日本のマーケットに進出してくるところをうまく掴めたらと思っています。
国内の出願に関しては、これから画期的に増える状況ではないので、出願ニーズを掘り起こしていくことが必要になってきます。自社に知財部があるような大企業であれば、自分たちで掘り起こしたりなどいろいろと舵取りできるのですが、中小企業はあまりそういう視点を持てない場合も多いので、そういった企業様に寄り添い、出願ニーズを掘り起こし、知財のアドバイスをしていけたらと思っています。
去年新聞にAIによって90%以上の弁理士が取って代わられるというニュースが出ていました。我々の業務の中でAIができる部分もあると思いますが、本質的な知財の業務はなくならないと思うので、そこにどういう風にうまくフィットしていくかが重要だと思います。
今後に関してですが、私個人としては知財に関する究極のジェネラリストでありたいと思っています。知財に関することであれば積極的に携わり、どういうところで知財が活かされているのかを広めていくために、どんな相談にも対応できるようにするために知識を常に身に付けることが大事だと思っています。
来年には、今までできなかったビックデータの保護ビジネスや産業規格(JIS)に関することも弁理士の業務に入れましょうというように弁理士法が改正されます。そういった新しい分野も含めていろいろな知財サービスを提供できるように、あらゆる知識を入れて、その上で事務所のカラーも活かしていけたらと考えています。